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舞さんからファンのみなさんへのメッセージ(2003年10月30日掲載分)です。
最近、私の内側に、ほんの少しだけ、外のものが浸透してくるようになりました。自分の周りで、空虚に回っていた言葉や、ただの景色でしかなかった人の表情や、仕草。笑顔の向こうの憂いや、沈黙の中に詰まった言葉。そんなものの、ほんの一部分が自分の中に入ってくるようになりました。私の中で「そうか、この事だったんだ」と叫びたくなるような瞬間があります。人って何だろうと考える長い旅に一歩踏み出したような気分です。昔読み散らした本の中の言葉の断片が、親に繰り返し言われた言葉の真意が、ある時本当の意味で自分にとどく時があります。知る事はとても楽しいのですが、分かる事には重さが伴います。って、何の事だか訳の分からない事を書いてすみません。種を明かせば、手塚治虫さんのマンガを最近読み始めて、ただ驚いてしまったという話なのです。宗教、芸術、哲学、心理学、生物学、物理学・・なんだか、よく分からないまま、読み散らしてきた本の中の言葉が、ある形になりました。子供の頃、「ブッタ」を読んで感動して以来の衝撃でした。私の中で絶対的な尊敬の念が手塚治虫さんに芽生えてしまいました。昔、感動した記憶はあるものの、マンガというものは、つまらないと思っていました。最近は文でも絵でも両方で人を魅了できるものは、素晴らしいものだと思うようになりました。
大学は今、ゼミという形態をとっていて、自分の選んだ教室で自分のテーマで勉強しています。そこで私は、薬理学の教室におじゃまする事になりました。皆さん畑の違う様々な分野の勉強をされてきた若い研究者の集まりです。若いけれど、しっかり奥様がいらして、とても温かな教室です。正直に言うと、初めは法医学の教室に行きたかったのですが、実力通り、くじ引きに負けました。今はこの教室に来れて、ラッキーだったと思っています。とても良い雰囲気の中で毎日実験ができて、幸せです。私は「カエルの骨格筋の遺伝子をマウスに発現させると、上手く発現しないのは何故?」という実験をしています。カエルの遺伝子を組み込んだウィルスを培養細胞に感染させると、できて欲しいタンパク質より、小さいタンパク質ができてしまいます。それは、どこがまずいのかという事を調べるものです。実験は上手くいったり、いかなかったりです。おかしな言い方ですが、上手くいかないのも良いものです。なんでだろうと考える材料があるのは、ありがたい事です。ない頭をウンウンと搾っていると、考える為の新しい道ができる感じがします。どんな頭も遣わないと損ですね(笑)。明日も又楽しい実験が待っています。
レコーディングは先日全て終わりました。録音をとる事の何が辛いかと言えば、やはり指が痛い事です。コンサートのように、そのステージに何もかも集中させて、一回が勝負という訳にはいかないのがレコーディングです。指の傷みを我慢してとった最後の方の曲がどうしても気になって、最近とり直させてもらいました。今回は國嵜さんというディレクターさんと一緒に作り上げたという気持ちです。お互いに妥協をしなかった事で今できる事は全部やったと言えると思います。日本にはレコーディングの設備を持たない新しいレーベルが沢山あります。そういう所に貸し出す為に、いつも使うレコーディングスタジオは、早めに予約を入れておかないと使えません。自分の会社の人間が使うからと言っても、少し割安なだけで、しっかり費用もかかります。ただ私が「録音しなおした〜い」と言えばすむ事ではないので、担当の方は大変だと思います。前にも書きましたが、美空ひばりさんが最後に録音されたという、この立派なスタジオも近い将来、壊される事になります。本当にもったいないです。
我家の龍之介が、書いていましたが、富士山の麓の別荘地に写真スタジオがあります。最初はそんな山の麓で熊に追われながら撮るのはどうかと思っていました。行ってみたらびっくり、ちゃんと一軒がまるまるスタジオというタイプのものが二軒並んでいました。林の中とスタジオの両方で写真を撮り、林の中ではスタッフの方達が発煙筒を持って走り回ってくれました。本当に御苦労様です。スタジオの中で撮った写真が表、林の中のものがジャケットの裏になると思います。因みに私が好きな写真は表の裏、つまり外からは見えない所の写真になる予定です。来年の発売予定が、事情で年内に繰り上がったので、なんだか忙しかったです。それでは、お休みなさい。竹松 舞
(2003.10.30掲載)
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