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舞さんからファンのみなさんへのメッセージ(2003年4月10日掲載分)です。
桜の花弁は、その時が来る迄、風に吹かれたって落ちようとはしませんが、精一杯咲いて「もういいかな」と思ったその瞬間に解き放たれたように、その手を離して空に舞う、散り方の美しい花です。桜の花は春を気配ではなく、確信に変えてくれます。桜の木は、一年中ずっと、そこに変わらずあるのに、この時期に唯一その存在を伝えてきます。この見事なピンクの花の群れも好きですが、私は全ての葉を落とした木が毎年付ける、新しい黄緑色の葉の瑞々しさが大好きです。冬の間、体の中に溜めて溜めて溜めていたエネルギーが一気に若葉になって噴き出したみたいで、見ていると嬉しくなります。
こんな美しい季節に砂漠で砂まみれになって、死と隣り合わせ、ぎりぎりの所で戦っている人達がいます。何かよく分からないうちに「なんで?」と思っている間に始まってしまったような「イラク戦争」。きっと米国で生活をしていれば、これは去年のテロの時からとっくに始まっていたものだと感じるのかもしれません。お父様のブッシュ元大統領と違って、ジュニアの方は兵役を逃れてしまっているので、頭の中で描かれた戦争の絵はそれ程悲惨ではないのかもしれません。誰だって大概の人は平和が好きです。ただ、「戦争反対」と平和愛好家のような言葉は私は言えません。本当に勉強しつくして、考えぬいて「反対」と言っている方達の言葉には深く同意できるのですが、メディアを通して、自分の言葉にもなっていない「戦争反対」を唱えられると、うんざりします。米国のやり方が良かったのか悪かったのか、結果はこの後戦争が集結してから色々な形で出てくると思います。ブッシュ大統領の考えが浅はかであるにしろ何にしろ私はやはりフセインの存在の方が恐いです(生死の程は分かりませんが)。勿論、米国がフセインを育ててしまったという面はあるかもしれません。ただ、「お金持ちで無防備なクウェートは弱いから奪ってしまおう」と言うような(湾岸戦争)、我々が考えるような同じ常識の上に立っていない人間が軍事的な力を持っていたら、それはやはり恐いです。ブッシュさんになら、「ばか」だの何でも言えますが、フセインやお隣の金○○の悪口は、やっぱり仕返しが恐くて言えません。
それにしても皆で一斉に「せーのっ」で武器を捨てて、一人の裏切り者も出なければ、どんなに良いでしょうか。「私はこんなに平和を愛して、約束通り武器を捨てたのに……」と断末魔の叫びを残しながら、相手が隠し持っていたナイフに血を流しながら倒れるのは嫌です。日本が自国を自分で守れない国である事がとても不安です。昔の米国とロシアのように、互いに武器を持つ事でバランスがとれるという平和の形も今は仕方がないのではないかと思います。とにかく一日も早くこの戦いが終わる事を望みます。
平和な国にいる私は何事もなく新学期を迎えました。先月に大学から歩いて5分の場所から今度は13分の所へお引っ越しをしました。遠くなるのに何故引っ越しかと言うと、もともと前にいた所は2年しか空いていない部屋でした。持ち主さんが外国から帰ってくるらしいので、いずれ何処かへ移る事は最初から決まっていた訳です。今度の棲み処はとても気に入っています。朝、鮭の産卵のように坂の上の駅から吐き出される人の流れに逆流する時だけ、ちょっと苦労しますが、晴れた日の帰り道なんか、古本屋さんや書店、地図専門の店、雑貨屋さんや、画廊など、冷やかしながら歩けば、あっという間に着いてしまいます。とにかく、部屋にはお日様がいっぱい入ってくるので、凄く幸せです。
授業も面白そうなものが始まりました。まだまだ、落ち着きませんが、徐々にお話できるようになると思います。
先日お師匠さんに連れられて、エディタ・グルベローヴァという人のソプラノ・リサイタルに行ってきました。サントリーホールの客席に座るのは初めてで、舞台とはあんなふうにすり鉢の底のような所だったのだと驚きました。それにしても、人の声は最高の楽器ですね。神々しいまでに澄んでいたり、艶っぽかったり、本物に触れるのは、とても素晴らしい事です。そして、グルベローヴァさんは最後はお客さんと直接、舞台の所で握手したり花束をもらったり、とても自然で、温かいコンサートでした。やはり花束は下さる方から直接手渡して頂くのが、本当ですよね、写真撮影だってコンサートが終わってからだったら、やっても構わないと思うのですが・・。
「本物」のお話しですが、私が前にこの場所で、修学旅行の事を書いた時、「ハウステンボスではなくて、京都、奈良、鎌倉へ行きたかった、本物に触れたかった・・」というような内容の事を書いたと思うのですが、読んだ方からメールを頂いて、「ハウステンボスは地域の方々の色々な理想を実現すべく熟考され、つくられた町並みなのです」。と教えて頂きました。失礼な書き方だったらごめんなさい。私はどう考えても、日本人としては、まず京都を見るべきだと思ったので、高校の修学旅行の行き先の決め方に意義を唱えるつもりで書きました。ハウステンボスの悪口を言いたかった訳ではありません(笑)。
日野原重明先生との対談は、対談というより、大先生の講議を聞いているようでした。私の祖父よりはるかに年上です。その95歳くらいの方が澱みなく喋られて、本の表紙のお顔よりもっとずっと、きりっとした方でした。好々爺のようではなく、ばりばりの現役のお医者様であり経営者でした。
我家の龍之介君は3月9日に1才のお誕生日を迎えました。お誕生日のお祝もちゃんと、やったんですよ。ケーキは31のアイスクリームケーキでした。犬は3歳くらいまで、落ち着かないで、かなり元気らしいのですが、それでも最近とても聞き分けが良くなってきました。龍之介は自分で決めたルールはずっと頑に守る方で、ピンクの発泡スチロールで出来たブロックが置いてあれば、簡単に飛び越えられるにもかかわらず、その先には絶対進もうとしませんし、大好きなピー煎でも人の手か、床に置かれた場合のみ食べて、机の上に置かれると、じっと黙って我慢して見ているだけです。いつもの器と違う器に入ったご飯も食べません。別に仕込んだ訳ではないのですが、自分で決めて実行しています。私は龍之介に長い文章で話しかけた時に彼が理解できずに首をひねる仕種が大好きです。でも先日外出先から戻った私を駅まで車でお迎えに来ていた龍之介が(彼は運転はしません)、私の顔を舐め回し、顔中びしょびしょで、眉毛まで濡れたのが、かなり気持ち悪かったです。でも何より、強い人のくせに照れ屋の父が、母の名も私の名も呼べないくせに、龍之介だけ「りゅうちゃん」と名 前でしかも「ちゃん」づけで呼んでいるのに気付いた時はショックでした。でも私も弟がたまらなく可愛いので焼きもちは焼きません。
とりとめもない事を書きましたが、今年の夏は演奏会で、大阪と仙台に行きます。
それでは、又お会いするまでお元気で。竹松 舞
(2003.4.10掲載)
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