クローズアップ人体(4)
 

 
耳のはなし

 

 

 わたしたちの耳は顔の端っこにとても控えめについていて、ときどきその存在を忘れ てしまう程ですが、とても大切な働きをしています。
 わたしたちの頭をちょうど両耳の前のあたりでぱかぁ〜っと割ると、耳の内部の構造 がよく見えます。耳はわたしたちの顔の横に餃子みたいなものがちょこんとついてい るだけのような感じがしてしまうのですが、じつは頭の骨をトンネルのようにガンガ ン掘り進めてあるのです。(図1)(図2)

 

 トンネルがある程度掘り進められたら、その先にはドアがあって、更に奥にはちょっ とした個室があります。耳の中の部屋なので鼓室です。いけない、ちょっとオヤジ路 線に…。そしてその部屋に通じるドアは鼓膜です。(図3)


 その部屋を抜けると次は迷路があります。ぐるぐる回る迷路。その名もラビリンスで す。なんだかロマンチック。見事にその迷路をクリアできると神経に乗って脳みその 方へいけるわけです。なんで行きたいのか?それは音を聴きたいからです。耳に入っ てきた音を脳で認識して始めて鳥の声を楽しめるのですから。(図4)


 わたしたちの耳から入った音はトンネルを通り、鼓膜を震わせます。すると耳の個室 の内側からドアを押さえ付けるようにくっついている小さな骨がその音を増幅させて ラビリンスへ送ります。すると音の波がラビリンスの中に生えている特殊な毛を揺ら します。これが刺激となって耳の神経が興奮して脳の側頭葉に行ってゴールとなるの です。

 考えてみると、ゴッホは耳を切り取ったけれど、頭蓋骨までほじくった訳ではないの で、音はある程度聴こえていたんでしょうね。

 ある程度音が聴こえていても、やっぱり聴こえにくいのはイヤですよね。いわゆる難 聴ですが、ロックンロール難聴なんてものがあるのです。正式には騒音性難聴。ロッ クのコンサート会場に行くと、それまではるんるんでも会場から漏れて聴こえてくる 音のあまりの騒々しさに一瞬中に入るのを躊躇するくらい巨大な音がします。ある値 以上の強大な音に曝されると、先程のぐるぐる型の迷路(蝸牛といいます)の内部の 組織が限界を超えて引き伸ばされてちぎれてしまうのです。でも、巨大な音に強い人 とそうでない人では個体差が大きいようなので、私は耳に自信ある!という人はガン ガン騒音を聴いてください。

 ここで、ちょっとラビリンスについてなのですが、その役割は音を伝える事だけでは ないのです。ぐるぐるの迷路の横にはループを描いた別のタイプの迷路があって、わ たしたちの体が傾くことでループ型迷路の中にもある特殊な毛が曲げられます。そし てその刺激が脳に伝えられると、我々は自分の頭が今どっちに向いているかを把握す ることができるのです。このため、耳のある部分が損傷するとわたしたちはめまいを 訴えることになります。

 あぁ、そういえばわたしたちが耳の存在をひしと感じる場面がありましたね。飛行機 にのった時です。飛行機が離陸すると外の気圧が下がって鼓膜がつっぱって痛いです ね。なんで痛いのかというと、鼓膜の両サイドでの圧が変わるからです。少し詳しく 説明します。

 冒頭でお話した個室、実は秘密の出口がありました。そこから細くて狭い回廊をぬけ ると口の中にでられるのです。正確にはもうちょっと喉の方ですが、普段こちらの喉 側のドアは雑菌を耳に行かせないように閉まっています。そのためわたしたちが勝手 に飛行機なんかに乗ると、気圧の変化に曝されて鼓膜が外側に引っ張られてしまうの です。だから痛い。

 そんな時はどうしていますか?わたしは小さい頃、唾を3回ゴックンしなさいと教わ りましたが、だいたい3回飲む頃にはつばがなくなっていました。まぁ回数はともか く(笑)、どうして「ゴックン」をすると耳が直るのでしょう?

 つばを飲み込むと口蓋帆張筋という筋が収縮することで狭い通路が開くからなのです。 通路が開いてくれれば、鼓室と外気の圧差がなくなって耳がつまった感じが解消する 訳です。

 ちなみにこの通路、耳からでる管なのでそのまんま、耳管というのですが、こどもと 大人ではその長さも違えば、位置も変わります。こどもでは大人と比べて耳管は短く、 耳からの入り口と喉への出口の傾斜がなだらかで、ほぼ水平です。このため、こども が風邪をひいたりして鼻をすすると、鼻水が簡単に耳に流れこみやすいので中耳炎の 原因になるわけです。子どもの頃、まわりで中耳炎に罹って学校を休む友達が何人も いたのはこういう訳だったんですね。(図5)


 というわけで、耳の話をしてみましたが、いかがでしたか?ちなみに鼓室の中にある 骨というのは耳小骨というのですが、これはわたしたちの体の中で一番小さな骨なん だそうです。今日のトリビアです。
 ではまた

(2004.8.2掲載)

 

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(1)腎臓のはなし

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