クローズアップ人体(1)
 

 
腎臓のはなし

 

 

 腎臓って何でしょう。おしっこを造る器官ですね。 おしっこをつくる、と一言で言ってもそこには色々な意味が含まれ ます。老廃物を体から排泄すること、血液の量を一定に保つこと、 血液のpHを調節すること…などです。

 おしっこによって排泄される老廃物には尿素、尿酸、アンモニア、 ウロクロムなどが含まれますが、おしっこが黄色いのはウロクロム という物質の色なのです。ウロクロムというのは何かというとヘモ グロビンが分解してできたものです。御存知のようにヘモグロビン は赤血球の中にあって、赤血球が歳をとると分解されてヘモグロビ ンも分解されるのです。それが黄色いおしっこの正体です。腎臓が この体にとって不要なものを外に出すという仕事ができなくなると 当然血液の中に老廃物が貯まって尿毒症という状態に陥ってしまい ます。そのような患者さんは人工透析を行います。

 逆におしっこに出ては困るものが出てしまう場合もあります。よ く聞くのはタンパク尿、血尿、糖尿などですね。タンパク質という のはからだにとって有用なものです。そのへんは腎もちゃんと心得 ているので、血液が腎臓でろ過されるときにタンパク質は腎臓側に 出て行かないようになっているのです。だからおしっこにタンパク が混じっているとその腎のろ過装置に大きな穴があいてしまって いる、などの故障が疑われるわけです。血尿はどうでしょうか?血 尿というのはつまり赤血球がおしっこに混じるものです。本来、赤 血球もタンパクと同様腎臓側にはろ過されません。大きいからです。 腎臓のろ過装置は小さいものしか通さないのです。ですからおしっこ に血が混じったら、ろ過に問題があるか、尿路で出血が起きた、つ まりおしっこが出来上がったあとで、それが膀胱へと運ばれる途中 で何らかの出血が起きている可能性があります。

 糖尿はちょっと違います。糖は小さいので腎臓でろ過されるから です。それだったらみんなおしっこが甘くなるんじゃないかと思わ れるかもしれませんがそうはならないのです。糖はいったん腎側に 濾されてもまた全部血液に再吸収されるからです。ところが、糖尿病の患者さんのよ うに血中の糖の濃度が高すぎると腎臓での再吸収が間に合わずおしっこに混じってし まうのです。ちなみに糖尿病という病気の存在に初めて気付いた研究者は、おしっこ に糖が混じっているのを舐めて確かめたわけではありません(笑)。御心配なく。膵 臓(血糖値を下げるホルモンを分泌する臓器です)を取り除いたわんこのおしっこに アリがたくさん集まってきたのを見て糖と知ったのです。

 さて老廃物の排泄に続いて、血液の量はどうやって調節するの でしょう?単純な話、おしっこをたくさん出せば血液量は減るし、 おしっこをちょっとしか出さなければ血液量はあまり減りません。 例えば脱水を起こした人では血液が減っては困るので腎臓は尿をた くさん作らないのです。では作る尿を減らすのはどうすればよいでしょうか?腎臓に 運ばれてきた血液から濾された「おしっこのもと」から水を取り除いて、又血液中に 戻してやる必要があります。 でも水を血液中に戻したいからと言って水をただそのまま送り 返すのではありません。腎臓はナトリウムイオンを使うのです。ナトリウムを血中に 移動させると水がぼくも一緒に、とばかりについていくのでナトリウムイオンをえさ に水を血液に送り返してあげます。く すりである利尿薬はこの原理を利用してナトリウムイオンの再吸収 をじゃまして水を体内に溜めないように働くものが多くあります。

 腎はおしっこを作る他に意外な仕事をしています。その事につい て少し述べて今回はひとまず締めくくろうと思います。その働きと いうのは血圧をあげる仕事、そして赤血球を作る仕事です。腎臓で はいままで述べてきたろ過装置の他にもう一つ特殊な装置を持って いて、そこで血圧の変化を感じ取ります。血圧が下がるとその装置 がレニンという物質を分泌させます。レニンは血液中に不活性で存 在しているアンギオテンシノーゲンという物質に作用して最終的に アンギオテンシン2に作り替えて、この物質が腎臓でナトリウムイ オンの再吸収を促進するホルモンを副腎から分泌させるのです。 上で述べたようにこのホルモンのはたらきでナトリウムイオンが再 吸収されることによって水がつられて血液に戻ります。そして血 液量が増えて血圧が無事上がってくれるというわけです。

 もう一つの赤血球をつくるはたらきについて。御存知の方もたく さんいらっしゃると思いますが、赤血球を実際作っているのは骨で す。正確に言うと骨髄です。腎臓はあるホルモンを分泌して骨髄に 赤血球を作ってくださいよ〜と頼むのです。しかしこれにも血圧を 上げた時のように赤血球を作らなきゃ!という刺激が必要です。それ が体の組織中の酸素の量です。酸素の量が減ると腎はそれを察知し てホルモンをだすというわけです。マラソンの選手が高地トレーニ ングをするのは、腎臓に酸素不足を感知させて赤血球をたくさん作 ってくれるように骨の造血組織に頼んでほしいからなのですね。そ うすれば一度にたくさんの酸素を運ぶことができてラクに走れると いうわけです。腎臓は赤血球をつくるお手伝いもし、使えなくなっ た赤血球のあと始末もしていたのですね。

 というわけで今回は腎臓を取り上げてみたのですが、いかがでした か?基本的なことが主でしたが、そのうち機会があれば細かい疾患についても書いて みたいと思います。

竹松 舞

(2004.4.19掲載)

 

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