舞さんからのメッセージ
 

 

 舞さんからファンのみなさんへのメッセージ(2004年3月2日掲載分)です。

 

 

 昨日鳴いていた鶯は巣の中で震えているでしょうか?久しぶりに見る雪に、小さい時、祖父母が作ってくれた雪の斜面を滑ったそりの事が、まばたきの様に頭の中に浮かんで消えました。二月の一ヵ月間は自分が試されているのかと思う程、課題の多い月でした。もっと練習をしたいと思っている時に、「指の為にこれくらいで止めよう」という選択をするのにいる勇気。もっと勉強を続けたいと思っている時に楽器の練習に時間を割かなければと決める勇気。なんだか勇気と言うととても大袈裟なのですが、私にとっては正に勇気です。勇気というのは、そんな所に使う言葉じゃないよと言われてしまいそうですが、そこで決めた事が自分にもたらす結果を考えるとやはりこの言葉を使いたくなります。いつもの事ですが、途中で泣きたくなったり、投げ出したくなったりしながら、最後はやはりやって良かったと思う。そんな事の繰り返しです。
 今回、このスケジュールの中にラジオの演奏のお話も、トークのお話もいただいて難しいかと思っていたのですが、やらせて頂いて良かったです。ソロの演奏は自分ではつまらないと思っている所があったのですが、頂いた機会に久しぶりに何度かやってみて改めてハープという楽器をみつめなおすチャンスになったような気がします。なんと言ってもソロはオーケストラの音にかき消される事なく全ての音を聴いてもらえるのですから・・。NHKのラジオに、ゲストで出して頂いた時は、まるで雑誌のインタビューのように自分の事をじっくり喋らせて頂いたので、これもめったにない機会でした。しかも編集される訳ではないので、そのまま全部聞いて下さる方の所に届きます。怖いくらい、あからさまに自分が出てしまいます。そして喋りながら反対に自 分自身の考え方を再確認したりしていました。この自分の事を喋るというのは、お相手をして下さる方の人間性によっても、「自分」の出方が変わってくると思います。自分の何が飛び出すかは、相手の方によります。この先、とんでもない人からインタビューされる機会があるかもしれないので(笑)そちらの方は、どうなるか見当がつかず、少し不安でもあります。フルートの高木のお姉様とコンサート以外で又一緒に演奏する機会がありそうで、曲選びにフルートとハープの為の曲を沢山聴きました。自分の知らなかった曲があったり、できたてほやほやの曲の楽譜が偶然手に入ったり、どんな小さな扉でもやはり開いてみると新しい発見があるもので、ワクワクします。なんて悠長な事を言っている時間は本当はないのですが・・。
 鈴鹿でモーツァルトのコンチェルトをご一緒したフルート奏者の斉藤さんは、恐ろしくフルートの上手い方でした。そしてとんでもなく、個性的な人でした。雰囲気は三谷幸喜さんのような方で、フルートを大好きで使い古してしまったおもちゃのようにあやつっていらっしゃいました。そしてバリバリのロックファンで、本番直前、お隣の斉藤さんの控え室からは、ご機嫌なツェッペリンのワンフレーズが…。その気合いと共に出て来られました。モーツァルトのコンチェルトにはカデンツァと言ってフルートとハープのみのオケなしのソロ部分があるのですが、カデンツァの作曲者は一人ではなく、従って何通りかのカデンツァが存在します。つまりこの部分はモーツァルトが作曲者ではない訳です。誰のカデンツァを使うかは演奏者の自由で、1楽章から3楽章までそれぞれ別の作曲者のものでも同じ人のものでも選べます。それで、斉藤さんは、私がご一緒した人の中で初めて自分でさらにアレンジを加える方でした。3楽章のカデンツァが始まった時、ゲネプロ(本番前のリハーサルです)とも違う、1楽章のカデンツァのフレーズが出てきて、おっとっと、何が始まるかなと思っていたら、見事に違う調から3楽章の調に戻ってきてくれて、ほっとしました。自分が入る場所を見失わないように少しだけ緊張の度合いが高まるのと、何が出るか分からない楽しさと両方あります。さらに話をさせたら、その辺のお笑いの人がかなわないくらい話術の巧みな方でした。話すだけでも食べていけそうな人でした。鈴鹿といえば、あの鈴鹿でして、コンサート会場の隣はF1の会場になる所でした。あのコースをお金を出せば(確か千円ちょっとだと思います)ゴーカートで一周できるのだそうです。私の泊っていた部屋の下はテニスコートで、家族連れが楽しそうにテニスなんか、やっていました。私はと言えば、部屋から一歩も出ずに「みんな今頃、試験勉強をしているんだろうな〜」なんて考えながら弾き足りないハープを弾いていました。そんな訳で結局鈴鹿に行っても、ホテルのお部屋が広くて奇麗だった事しか、よく分からないまま帰ってきてしまいました。
 そして、コンサート後の試験をなんとか乗り切り、今日に至ったのですが、本日私の可愛い弟が入院いたしました。食欲がなく、水だけは飲むのですが、その飲んだ水は30秒後には吐き出していました。腸壁からの出血もひどくて、悲惨な状態でした。そこで、点滴しか道が残されていないので、獣医さんの元へと送られました。ところが龍之介はこの獣医さんが大好きで、又他のワンちゃんに会えたりもするものですから、家ではぐったりしていたくせに、最後のカラ元気でしっぽのないお尻を降りまくり、受付の奇麗なお姉さんを舐めようと奮闘していたそうです。検査の結果、特に恐い伝染病にかかっている様子もなく、ストレスによる出血のようでした。龍之介のストレスは、風の音を怖がる事によります。春一番、春二番…と続いたものですから、彼は生きた心地がしなかったようです。龍之介は風の唸るゴ〜という音も、風に何処かのビニール袋が舞うのもはためくのも、恐ろしい物のように感じるらしいです。びっくりしたのは、犬用にも精神安定剤が存在するそうで、今度、風のひどい時はそれを飲ませればいいというお話でした。犬用の薬と言っても多分人間用の物を使っているのではないかと私は想像しているのですが、本当はどうなんでしょうか?初めて家族と離れて、犬猫病院のケージの中で眠る気分はどんなものなんでしょうか?早く元気になって欲しいものです。多分今頃はもう元気かもしれませんけど。
 それでは、弟のいない寂しい夜にさようなら。

竹松 舞

(2004.3.2掲載)

 

掲載済みのメッセージ

2004.1.25

2003年掲載分

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